日本の企業の多くの会社が、何らかの「プロジェクト」と呼ばれる活動を行っている。そして、プロジェクトを支える会議の一つとして、ステアリング・コミッティーという名前の会議を作る。 純日本風の会社は、だいたいその言葉を縮め「ステコミ」と呼ぶ会社も多い。(ちょっと、気持ち悪い響き) (ここでは、アメリカのプロジェクト・マネージメントの話をする。どう考えても、それが世界の標準となっているからです。でも、日本では、その標準が、自社に使えるように、いいとこどり、つまみぐいされるから、本物のプロジェクト・マネージメントが持つパワーを享受できない場合が多いような気がします。) ステアリング・コミッティーというのは、何をする会議だと思いますか?大体の日本人は、カタカナの言葉が、ピンとこないから、その会議に参加してみて、自分の経験をもとに、会議の目的を類推して、認識する。 「あぁ~、これは、プロジェクトのメンバーが、何かを報告しているな。つまり、現在のステータス(状態)のチェックだな。」 いいえ、それは、プロジェクト・ステータス・ミーティング(プロジェクト進捗確認ミーティング)の役割です。 プロジェクト・ステータス・ミーティングだったら、その会議を持つ責任者(ミーティング・オーナー)は、プロジェクト・スポンサー(プロジェクト・オーナーまたは、プロジェクト責任者)がやる。 発表は、プロジェクト・マネージャー、もしくは、複数プロジェクトをマネージするプログラム・マネジャーが行います。プロジェクト・マネージャーが、わからない部分に関しては、テクニカル・リーダー、テスト・マネージャーなどが同行し説明します。 ステアリング・コミッティーとは、コロンブスの西インド諸島発見の船旅で喩えると、大きな船の進行方法を左右に変えるために舵(かじ)がある。「舵を取れー」と映画で出てくるあの舵です。その舵を切る動作を、操舵(そうだ)と言いますが、操舵がステア( Steer )です。今、操舵しているのであれば、現在進行形にして、ステアリングとなります。 マストの上には、見張り番が常に望遠鏡で前方、まわりを監視し、何かが起こりそうになると、「それを通知します。」 例えば、前方の氷山が見えるのであれば、舵をどちらかの方向...
人間から人間への情報伝達の時間を、見誤る。 経験値によって、 A さんから B さんへの情報伝達のスピードは、上がります。 例えば、アメリカの現地の人間にソフトウェアの設計を始めて行わせるときに、経験豊富な日本人がリーダーになり、教えていきます。リーダーの前田さんは、部下に概要を話して、「これを、やって設計してみてください。」と部下のリチャードに言います。リチャードは、経験豊富なシステムアーキテクトで、知能も高い人です。 数日たって、リチャードの様子を見ると、何だかあまり進捗していません。 さて、何が起きているんでしょうか? 前田さんは、日本では何回も大規模プロジェクトをマネージしてきた人です。部下も持っていて、指示も出していました。 私が、リチャードに「何か困っていることはないですか?」と聞くと、「私の仕事のインプットが何かわからない。」と言います。彼には設計のお仕事をお願いしているのだから、要件は、きちんと彼に伝えられているはず。でも、それがちゃんと伝わっていない。 前田さんを呼んで話を聞くと、「ちゃんと、話しましたよ。」と言う。 最初は、私も、単なるコミュニケーション不足だと思っていたんですが、そうではなかった。 前田さんは、言ったつもり。しかし、リチャードは、完全に腹にはまっていなかった。理解の深さが、非常に浅かったんです。でも、そんなの当たり前です。初めてやらされること、初めて聞くことが、一瞬でわかる天才はいません。 日本では、前田さんの仲間は、同じようなプロジェクトをこなしてきた経験者、熟練者の集団です。 だから、一(いち)言うと、十(じゅう)わかる人たちなんです。 リチャードが、言われたことを咀嚼する時間と言うものを、きちんとプロジェクト計画に盛り込んでいかないと、一瞬でプロジェクトと言うものは、遅れるんです。 日本企業は丁稚奉公で、ソフトウェア開発を訓練します。最初は、小さい部分から始め、徐々に、経験を積んで、範囲を広げていきます。大学卒の新人は、はじめは、何がなんだか、わからないまま、言われることだけをこなしていく。その中で、様々な疑問を持ち、それを解きと言う訓練を続けます。 アメリカのソフトウェア開発の熟練工を中途採用して、彼らに仕事を渡す場合には、それでば成り立ちません。...